【一枚の写真】

入院していた半年間

抗がん剤と手術とリハビリの日々を今振り返ってみて

やっておけばよかったなと思うことがあります

闘病中の写真を撮っておけばよかった

今は写真を撮ることを趣味にしてるけど

当時はカメラも持っていなかったし

先が見えない治療の中で

写真を撮ることも撮られることも

しようなんてまったく思えなかったというのが、当時の気持ち

でも手元に残ってる一枚の写真があります

クリスマスイブの日に

先生と看護師さんが

サンタさんやトナカイの着ぐるみを着て

一人一人にクリスマスカードを配ってくれました

記念に仮装したスタッフと写真を撮ってくれて

あとでいただいたものです

抗がん剤の点滴につながれて

脱毛した頭に帽子をかぶって

先生たちとピースして写ってる私

クリスマスに抗がん剤なんてって思っていました

同じ年ごろの子たちは

きらきらした街で遊んでいるはずなのに

そんな、ふてくされていた私の気持ちが

先生たちのおかげで一瞬ゆるんだときの写真です

この写真を見ると

私がんばってたなぁって思うんです

とにかく生きるために治療をしました

手術が嫌とか抗がん剤が嫌とか

選んでいる余裕なんてなかったから

気持ち的には沈みがちだったこの頃

でもこの頃があるから

今の私があるって思えるんです

命に精一杯向き合っていたときの私がいるから

だからいつ見ても

この写真には勇気をもらえるんです

今思えば

抗がん剤で気持ち悪くなってる顔とか

母のご飯を食べてるおいしい顔とか

友達が会いに来てくれたときの笑ってる顔とか

もっともっと撮ってもらってればよかったって思います

そこに私が仲間と生きた日々があったから

あとで見たときに

こんなこともあったねって

笑って話せたと思うから

もちろんそれはずっと後になって

結果として思ったことだし

治療の真っ最中に

生きれるかどうかっていうときに

写真撮ってほしいなんて思えないかもしれないけど

苦しい時間の中に

穏やかな時間も確かにあったことを

残しておきたかったなと思ったのです

他の方はどうなんだろう

今看護師として働いてて

趣味で写真も撮ってる私が

入院中の患者さんの穏やかな時間を

写真に残せたらいいなってひそかに思ってます