【歩くのはゆっくりでいい】

術後ゆっくり生活できるくらいにリハビリをして

5ヶ月ぶりの退院となりました。

 

退院!!

入院したときは、もう病院から出られないのかもと

真っ暗に感じていた世界。

でも季節が変わった外の世界は優しく私を受け入れてくれました。

 

家の空気をたっぷり吸って、

母の作ったご飯を毎日食べられる幸せ。

もうなんでもできるような気になっていました。

 

そんな中、心配してくれていた友達と外でご飯を食べることになり、

喜び勇んで出かけました。

 

びっくりしたのは、周りの人の歩く速さ。

真横をすり抜けていく人。

階段を駆け下りる人。

走り回る子供たち。

 

まだゆっくりしか歩けない私には、

思ってもみなかった恐怖でした。

ぶつからないように、病院で教わった歩き方を一歩一歩確認しながら

前に進みました。

 

でも電車を降りる人の波に押されて、

あわあわとホームに降りたとき、

やっぱり周りの人のスピードに焦ってしまったのか、

膝がガクんと折れました。

 

足の筋肉の一部も切除しているため、

バランスを崩すと体を支えることができません。

一瞬で倒れました。

 

つまづいた、とかではなく、

膝に力が入らずに体がストンと落ちていく転び方。

周りの人もその変な倒れ方にたぶんびっくりしたと思います。

私も術後初めての転倒で気が動転してしまいました。

 

どうやって立つんだっけ?

どうやって歩くんだっけ?

膝は大丈夫かな?

傷を作ってはいけないのに。。

 

周りの人は誰も手を貸してはくれませんでした。

一人でなんとか立ち上がって、ホームのベンチにひとまず座って深呼吸。

 

大丈夫、大丈夫。

ちょっとずれてしまったウイッグをささっと直し(実はこれが一番焦った笑)、

呼吸を整えて今度は周りのスピードに流されないように

慎重に歩きました。

 

 

病院の廊下は手すりがあって、床も滑らないようになっていて、

みんな優しく手を差し伸べてくれます。

 

でも一歩外に出たら、段差はいっぱいあるし、

電車やバスは待ってくれないし、

つかまるところもないし、

東京の人は歩くの早いし、

転んでも自分で起き上がるしかないのです。

 

 

あー残念な世の中、残念な私の体って思いましたが、

でもね、自分が障害者という社会的弱者になってみたら、

街の中のそういう方の大変さがよくわかるようになりました。

 

お年寄りや妊婦さんや、

体の障害を持った人たち。

 

今までは困っている人に気づくこともできなかったけど、

身を持ってその大変さがよくわかるから、

考えることなく助けてあげることができます。

 

誰も助けてくれないからって、自分も誰も助けない人にはなりたくない。

わかるからこその手助けをしたいと思っています。

 

周りのスピードに合わせる必要なんてないから、

ゆっくりゆっくり、自分の正しいと思う道を進めばいいんですね。

 

 

杖を使って歩いてると、物珍しげに振り返ってジロジロ見られるので、

以前は下を向いて歩いていました。

 

でもよく考えたら、恥ずかしいことなんて、何一つありません。

病気になっても、杖ついて歩くことになっても、

周りの人に劣等感を感じる必要なんてなかったんです。

 

見たければ好きなだけ見ればいい。

その代わり、一人一人が自分ができることを一瞬でも考えてほしい。

そんな風に思って、今日もゆっくりゆっくり歩いています。