【がんになって得たもの】

がんって聞くと大抵の人は「癌」を思い浮かべます。

私はがん患者だと書いていますが、厳密に言うと「癌」ではありません。

「がん」と「癌」を自分の中で分けて使っているんです。

 

わかりづらいですよね。

「癌」っていうのは、内蔵にできるもの。

胃とか肺とか子宮とか。

 

私のがんができた場所は骨でした。

内蔵ではなくて、筋肉や骨や脂肪などの組織にできる悪性の腫瘍を「肉腫」って言います。

だから骨にできた肉腫なので、骨肉腫という病名です。

私の中で「がん」=「肉腫」であって、「癌」ではないんです。

でも肉腫って聞きなれないと思うので、あえて「がん患者」なわけです。

 

 

筋肉や骨や脂肪のがんって何科にかかると思いますか?

 

胃癌だったら消化器外科(一般外科ともいう)。

肺癌だったら呼吸器外科。

子宮癌だったら婦人科。

じゃあ骨のがんは?

 

 

答えは整形外科。骨だから普通にわかりますね(笑)。

 

 

でも整形外科に入院している人って、

事故や怪我とか、膝や腰が痛いお年寄りっていうイメージではないですか?

 

たぶん一般の病院だったらそういう方がほとんどです。

でもがんの専門病院の整形外科には、

事故とか怪我で入院している人はいませんでした。

 

 

実は整形外科領域のがん=肉腫って

一般的な癌よりもかかる人が少ないんです。

だから診断できる医師も少ないので、

この病院には全国から肉腫の患者さんが集まっていました。

ちなみに外傷患者は受けていません。

 

そしてなぜか肉腫にかかる人は若い人に多いのが特徴です。

癌は年とともにかかる人が増えていくんですが、

肉腫は10代~20代に多い病気なんです。

 

 

私がこの病気にかかったのは21歳のとき。

同じ病室にいたのは20代~30代の方ばかりでした。

 

もちろん全員が悪性腫瘍ではなくて、良性腫瘍の方もいますが、

やっぱり若い人が多いのには、びっくりしました。

 

 

入院してもしばらくカーテンを閉め切って過ごしていた私ですが、

カーテンを開けて過ごすようになってからは、

同室の患者さんたちと話すことが楽しくなりました。

 

だって同じ年代の女性が毎日一緒に生活しているんです。

もちろん結婚してる人や子供がいる人と背景は様々でしたが、

同じ時期に同じ境遇になった女性たちと話したいことはたくさんありました。

 

 

それぞれの抗がん剤のこと、副作用の出方、どのくらい吐き気が強かったか、

抗がん剤投与中なにを食べられたか、なにを食べられなくなったか、

いつ髪の毛が抜けて、どこで帽子やウィッグを買っているか。

 

単なる女性のおしゃべりではなくて、治療の情報交換です。

本やインターネットで調べた知識よりも

生の声を聞けることがありがたかったです。

 

 

病気になってなくしたものはたくさんあります。

でも彼女たちに出会えたことは大きな財産になりました。

抗がん剤治療と手術のための長い入院生活でしたが、

ただ辛かっただけではなくて、どこにいても何があっても

得るものはあるって教えてくれた人たちです。

一緒に頑張ろうねって約束した大切な人たちです。

 

今の私があるのは、彼女たちのおかげ。

一緒に泣いて笑った彼女たちとの時間は今でも大切にしています。