ワガママ言って富士山を見に行かせてもらったので、
手術を受ける気持ちは固まりました。
もちろん怖いし、自分の体がどうなるのか不安だけど、
手術に対してのマイナスな思いはありませんでした。
術前検査をたくさんして、
整形外科と呼吸器外科と麻酔科と
手術室看護師とICU看護師からの説明を受けて、あとはもう当日を待つだけ。
予定は9時間。
頑張れ、私!
そして、手術の2~3日前にある出会いがありました。
病棟のデイルームでテレビを観ていたときに現れた一人の男の子。
歳は私と同じくらい。
外来の帰りに病棟に寄ったと思われる彼は、杖をついていました。
話してみたくて、でも話しかけられずにいると、
「抗がん剤やってるんだね。」
「手術するの?」
向こうから話しかけてくれました。
「うん、今度の水曜日」
境遇が同じだとお互いに思ったのか、話をしていく中で、
彼も私と同じ骨肉腫で、
6年前に人工関節置換術を受けていることがわかりました。
私が受ける手術を、実際に受けた人が目の前にいる。
杖を使って、歩いている。
それまで術後の自分の体が全然想像できなかった私には
待ち望んでいた出会いでした。
「杖使わないと歩けないの?」
気になっていたことを聞きました。
20歳代の男の子が杖を持つ姿を初めて見るせいか、
やっぱり違和感がありました。
「使わなくても歩けるけど、使った方が足への負担が軽くなるよ」
私が「杖使うの嫌なんだけど。」って本音を漏らすと
「でも長い目で見たら足大事にしなきゃいけないからね。」
彼に出会って、わかったことが二つ。
一つは、手術後も歩けるようになること。
先生にどんなに「歩けるよ」って言われても想像できなかったものが
やっと近い未来の自分の姿として、考えられるようになりました。
もう一つは、6年間は生きられるということ。
骨肉腫は予後が悪い。
あと何年、あと何ヶ月生きられるのか、毎日考えて生活してきましたが、
少なくとも術後6年生きている人に出会えたことで、
6年間の寿命を得た思いでした。
そして彼が、自分の将来を長い目で見ているということは、
6年過ぎた後も生きられる望みがあるということ。
病気になって初めて、自分の未来に少し光が射しました。
先生や看護師からの専門的な説明はもちろん必要だけど、
それ以上に私に生きる希望を見せてくれたのは、
私よりも先に手術を受けてちゃんと生きている人の存在でした。