手術後の体は、人間の体の治癒力というものを直に教えてくれました。
手術は怖い、痛いっていうイメージが強いと思うので、
今回は、術後の体がどうなるかというお話です。
傷ができると血小板が血を止める働きをし、
マクロファージが死んだ組織を取り込んできれいにし、
コラーゲンを主体とした肉芽組織が形成され、
安定したきれいな傷になる。
教科書的にはそんな風に書いてありますが、
これをそのまま理解できるわけありません。
体に大きな傷ができたら
きっとものすごく痛くて何をするのも辛いんだろうな、
私も普通にそう思っていました。
でもいい意味で裏切られました。
手術後は確かに傷も体中も痛いです。
でも鎮痛薬の効果と、少しずつ動くようになっていく体が実感できたんです。
昨日まではおかゆ一口しか食べられず、
携帯のメールをチェックするのもやっとだったのに、
今日はご飯をおいしいと感じて食べていて、
ベッドのギャッジアップで起きていられる。
ドレーンや点滴が抜けていく。
車椅子に乗れた。
自分でトイレに行けた。
膀胱留置カテーテルが抜けた。
さらに食欲も出てきた。
糸で縫われていた傷もくっついていくのがわかる。
リハビリの先生と一緒に立つ練習をする。
始めは足に力が入らず貧血で気持ち悪かったのが
だんだん感覚が戻ってきて、立てるようになる。
一歩一歩歩けるようになる。
手術した膝も曲げる練習をして、座っても自然な角度に曲がるようになる。
今まで当たり前にできていたことが
もう一度自分の体の機能として取り戻されていく。
手術前は自分の体がどうなるのか、怖くて仕方なくて
できなくなることばかり考えていました。
膝が90度までしか曲がらなくなるとか、
走れない、正座できない、杖がないと歩けないって。
どうやって生きていけばいいんだろうって。
でも走れなくても自分の足で歩くことができるし、
正座できなくても日常生活にはそんなに困らないし、
杖がなくても歩くことができるんです。
それが日に日にわかっていって、
自分の体のすごさに気がつきました。
12時間もの手術を超えて、
今もう一度新しい私を創り出そうとしてくれている。
きっと血小板もマクロファージもコラーゲンも
これでもかっていうくらいに頑張ってくれたのだと思います。
手術前の不安な気持ちも
手術後の感謝の気持ちも
全部本当の私。
新しい体の創造を体験して、
真っ暗だった道にやっと光が射し込んだような、そんな感覚でした。
もちろん手術体験は一人一人違いますし、
痛みも主観的なものだから、「手術ってこうなんです!」とは言えないけれど、
少なくとも私が経験した手術は
生命の維持には欠かせないものだったこともあり、
気持ちをとっても前向きにしてくれるものでした。
確かに痛いし怖いけど、それだけじゃないって思います。
でももし不安で仕方なかったら遠慮なくご連絡くださいね。